1958年ごろから追突自動車事故後の頚部の疼痛に対してむち打ち症という診断名が用いられるようになりました。
今日では頚椎が生理的稼動範囲を超えて受傷したものを頚椎捻挫、それ以外のものには頚部挫傷と呼び、区別しています。
また総称的な診断名として外傷性頚部症候群と呼ぶこともあります。
頚部捻挫の場合、頚部の筋肉、靱帯、椎間板、関節包などの軟部組織の損傷がほとんどですが、
それに伴い頚神経根、脊髄、交感神経などの症状が付け加わることがあります。
その中でも、大きく4種類位に分けることができます。
1、 「頚椎捻挫型」 頭痛、頚部痛、頚椎運動制限。
2、 「頚神経根症状型」 後頭部痛、頚部、背部、上腕から手指にわたる痛み、コリ、シビレ、
脱力や頚椎運動障害など頚神経根症状が目立つもの。
3、 「バレーリュー症状型」 頭痛、頭重感、めまい、耳鳴り、難聴、悪心、嘔吐、眼振、眼痛、
霧視などの自律神経症状の目立つもの。
4、 「脊髄病状型」 四肢の不全麻痺、歩行障害、筋肉萎縮、膀胱直腸障害など。
鍼灸治療では局部の筋肉、靱帯の腫脹、疼痛の緩和をし、自然治癒を促していきます。
ムチウチ直後は、まだ軟部組織や靱帯、骨膜、軟骨の損傷が主であるので頚椎の骨の変形はまだありません。
ですからこの時期に適切な治療を行えば、骨が変形することも無く後になって症状が出ることもなくなります。
ですから、ムチウチを起こしたら早期の治療が理想的です。
そのままにしていて、頚椎の関節が変形してしまい、上のような症状になってしまう方が多くみられます。
特に、3のバレーリュー症状によって起こる、めまい・耳鳴り・難聴・悪心・嘔吐等の症状は、
メニエール症候群とほとんど同じなので、メニエールと思い込んで悩んでおられる患者さんが大変多くいらっしゃいます。
この場合、原因はあくまで頚椎にあるので頚椎の治療が必要です。
また、交通事故にはあってなくても、幼少の頃や、柔道などのスポーツ、ずっと上を向く仕事などで、知らず知らず頚椎を傷めていることがあります。
肩の凝り・頭痛・目の疲れ・耳鳴り・めまい・吐き気・手の痺れや痛み・肩関節の痛み等が重要なサインです。
鍼灸では、上の1・2・3のどの症状でも治療することが出来ます。
では、頚椎の治療について簡単にご説明したいと思います。
頚椎の関節は、7つある頚椎を連結している部分のことで、ショックを受けたり慢性の疲労・圧迫などにより、
炎症を起こし腫れたり、軟骨が磨り減ったり、長期化すると骨自身が変形しています。
膝の関節炎を想像されると分かりやすいと思います。
ところが頚椎の関節はとても小さいので、治療にはミリ単位のピンポイントでの正確性が要求されるのです。
ですから、繊細なアプローチが可能な鍼灸治療は、最も理想的と言えるでしょう。